健康増進活動を行う保健師・看護師が感じる困難についての質的インタビュー調査

小田川瞳子・及川正範・浅井篤
First Published: August 5, 2025

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Abstract

本研究の目的は、市民や労働者に対し健康増進活動を行う保健師・看護師が感じる困難や疑問について明らかにし、健康増進活動の倫理的懸念との関連について手がかりを得ることである。健康増進活動に従事した経験のある保健師・看護師を対象に、半構造的インタビューを用いて調査した。
保健師らは健康増進活動の意義や、保健師である自身の役割を理解していた。そして健康増進を通して市民らが幸せになることを望んでいた。一方で健康増進活動の目的や効果に対し疑問を抱いている保健師らもいた。中には保健師の職業上の責務と個人的な健康増進の考えの間で矛盾が生じている者もおり、保健指導遂行に困難を感じていた。
本研究の結果と先行研究を踏まえると、現在の健康増進体制においては、個人の健康に対する責任が過度に強調されている傾向があり、市民らにネガティブな感情を与え得る懸念がある。健康を指導・教育する場で、必要以上に個人の健康に対する責任だけを厳しく追及しない姿勢が重要であることが、改めて示唆された。

Key words

保健指導、健康増進、公衆衛生倫理、保健師、テーマティック・アナリシス法