患者に対する干渉のあるべき姿について

田中顕弥
Volume 2 Issue 1 Pages 35-41
First Published: September 9, 2019

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Abstract

現代において、インフォームドコンセント(IC)が叫ばれながらも、その限界も医療訴訟の件数の増加、反ワクチンによるアウトブレイクなどの形で露呈しつつある。患者の自律、医師と患者の平等性の尊重は、かえって悲惨な状況を招くのではなかろうか。本稿ではまず、患者の利益を尊重したIC のモデルがパターナリスティックな側面を持つことを示す。次に、パターナリズムの性質を示したのち、正当化派と批判派の間での考えの相違に焦点を当てる。その後、IC に必要な判断能力の有無を判定するのはあくまで医師であり、医師が判断能力を判定するのはパターナリスティックな行為であることを指摘する。最後に、民法の観点から医療がパターナリスティックであることを指摘し、その正当化の方法としてマターナリズムを提案する。