出生前検査の文脈における中立性 ─ リベラル優生学をめぐる議論を手掛かりとした医療専門職と政府の役割
圓増文
Volume 9 Issue 1
First Published: August 21, 2026
Abstract
日本社会は、出生前検査全般の提供およびその情報提供について、消極的な方針をとってきた。しかしNIPT (Non-invasive prenatal genetic testing:非侵襲性出生前遺伝学的検査)の導入と急速な普及(特に非認証医療施設での急速な拡大)を契機として、「妊娠・出産・育児に関する包括的な支援の一環として、妊婦等に対し、出生前検査に関する情報提供を行う」という方向へと方針転換が図られてきた。この新たな方針にあって、医療専門職や政府に求められる態度として頻繁に言及されるのは「中立的な態度」やそれに関連した「非指示的態度」である。本稿は、この「中立的な立場」とはより正確にはどのような態度を指し、なぜ望ましいとされるのか、中立的態度は本当に政府や医療専門職の態度として望ましいのかを検討する。本稿はこうした問題を検討する手がかりとして、リベラル優生学の「国家の中立性(state neutrality/governmental neutrality)」をめぐる議論に注目する。検討を通じて、最終的には、この技術の普及・提供に関し政府に求められる役割を明らかにすることを目指している。
Key words
優生学、リベラル優生学、出生前検査、非侵襲性出生前遺伝学的検査、国家中立

