生体腎移植におけるドナーの自発性についての倫理的問題

三浦羽未
Volume 5 Issue 1 Pages 73-81
First Published: August 9, 2022

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Abstract

日本移植学会倫理指針では、生体腎移植のドナーは原則的に親族に限定することが規定されている。これにより、親族に「ドナーにならなければならない」という「圧力」が生じ、ドナー本人の自発性が損なわれる可能性が指摘されている。堀田(2006)は、この「圧力」が生じる理由を、「親族がドナーになるかならないか」という決定と、「レシピエントが回復するかしないか」という状態の因果経路が可視化されているためだと指摘した。さらに、その因果経路を不可視化して「圧力」を軽減するシステムを提案した。しかし、堀田(2006)の一連の主張には修正すべき点がある。また、堀田(2006)が提案するシステムを生体腎移植に導入すると、たしかに「圧力」は軽減されることが予想されるが、決して理想的な状況とはならず、社会に受け入れられるとは考えられない。一方、献血においては堀田(2006)が提案したシステムが理想的に機能し、「圧力」が軽減されている。生体腎移植においても、献血と同様に理想的な形でこのシステムを機能させるためには、レシピエントの需要を充足するほどの、多くのドナー候補が必要となる。

 

Key words

生体腎移植、自発性、臓器売買、献血