生命倫理をめぐる現状と展望(2007年)/児玉聡

●終末期医療

昨年3月の射水市民病院事件が契機となり、終末期医療のあり方をめぐる議論が活発化している。厚労省が本年6月にまとめたガイドラインでは、医療・ケアチームと患者・家族らによる慎重な手続きを踏まえた決定の必要性が強調された。本年2月に日本救急医学会が公表した指針案では、治療中止が許される4類型が提示されており、厚労省のものよりも一歩踏み込んだ内容である。国会でも超党派の議員連盟が6月に尊厳死法案を公表した。患者と家族の意思が最大限に尊重され、医療者が法的訴追の心配なく医療を行える環境整備が求められている。

●生殖医療

本年3月に最高裁は、向井亜紀夫妻と代理出産による双子の間には、実の親子関係は民法上認められないとの判決を出した。日本産科婦人科学会が会告で自主規制している着床前診断や代理出産を行って除名処分を受けた大谷徹郎・根津八紘医師らは、会告や除名は違法だとして訴訟を起こしていたが、本年5月の地裁判決で敗訴。これにより、会告の有効性が改めて確認された。だが、裁判所も同学会も、司法判断や自主規制の限界を認め、立法の必要性を訴えている。現在、日本学術会議が生殖医療全般について検討中であるが、社会の合意形成が早急に求められている。

●臓器移植

昨年10月、愛媛県の宇和島徳洲会病院で臓器売買が行われていたことが問題となった。その渦中にいた万波誠医師を中心とする「瀬戸内グループ」が、90年代から病気腎移植(→項目)を実施していたことが報道され、大きな社会問題となった。また、日本人の渡航移植に関して、フィリピンや中国での臓器売買の実態が明らかになりつつある。こうした問題の背後には、国内の慢性的なドナー不足がある。衆議院では、本年6月臓器移植法の改正を検討するための小委員会が設置されたが、今後の臓器移植制度のあり方を見据えた早急な議論が必要である。

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