CBEL Report 創刊に際して

赤林朗
Volume 1 Issue 1 Page 1
First Published: September 28, 2018

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CBEL(Center for Biomedical Ethics and Law)、日本語名:生命・医療倫理教育研究センターは2003年に東京に設立されました。アジアで初の生命倫理・医療倫理の拠点です。CBEL は、設立当初より、生命倫理・医療倫理の本質でもある「学際性」を重んじてきました。私が、多様なバックグラウンドを持ったCBEL スタッフに呼びかけたモットーは、「一つのテーブルを囲んで、一つの同じトピックについて、異なる分野の人たちにも理解できる言葉で議論をしよう」につきます。

そのモットーの源になったのは、ちょうど私が1993 年、世界初の生命倫理の拠点として1969 年に米国・ニューヨークに設立されたヘイスティングス・センターで客員研究員をしていた時、センターのスタッフの議論に参加させていただいた時の経験です。多分野の研究者らが、互いに理解可能な言葉を用い、展開される議論のありかたは、ただただ、美しかったのです。

ここまで書けばお気づきの方もおられるかもしれませんが、CBEL Report は、実はThe Hastings Center Report 日本語版を目指して創刊されております。日本語・英語のオンライン・ジャーナルです。

CBEL Report の特徴はいくつかあります。第一に、日本の研究者にとって、これまで生命倫理に特化した論文を発表できる媒体は、『生命倫理』(日本生命倫理学会誌)以外にほとんどありませんでした。私が日本生命倫理学会誌の編集委員長をしていたときに、年1 回発行の限られたスペース故に、どうしても不採択にせざるをえない、未完成ではあるけれど、大きな可能性を秘めた論文が多くありました。CBEL Report は、そのような論文を積極的に掲載していきます。第二に、研究論文(Regular Article)と招待論文(Invited Article)の枠を設けました。研究論文は通常の査読(ピア・レヴュー)を行いますが、招待論文は編集長と編集委員の裁量で掲載します。萌芽的な、挑戦的な、可能性のある論文を積極的に掲載していきたいと思います。第三に、翻訳論文(Translated Article)の枠を作りました。これは他言語の論文を、日本語に翻訳し掲載するという一方向的なものではなく、日本語で書かれた論文も英訳し掲載します。日本での多くの議論の蓄積があるにも関わらず、それが世界へ発信されていないのが現状だと思います。日本から世界に発信し、グローバルな生命倫理研究の発展に微力でも貢献できたら、という思いが私にはあります。

学術誌の質は、投稿者の皆様の貢献無くしては上がるものではありません。創刊の趣旨に賛同される国内外の研究者からの多くの投稿を期待しております。

2018 年8 月
CBEL Director
赤林 朗