現代ホスピスにおける患者の希望を支える医療者の態度 ― 患者の全体性、スピリチュアリティ、創造性 ―
田淵綾
Volume 5 Issue 1 Pages 35-54
First Published: September 20, 2022
Abstract
現代日本のホスピスにおいて、薬物による疼痛緩和は浸透したが、患者がどのような状況でも希望を持てるよう支えるために、医療者が患者に寄り添うことは不十分だと言われる。本論文は、現代ホスピスにおいて寄り添うというケアがいかに捉えられてきたのかを検討することで、身体的快楽を最も価値あるものとする社会の物質至上主義を克服し、患者が絶望しないための医療者の態度を明らかにする。すなわち、現代ホスピスを始めたソンダースが聖書から引用した「私とともに目を覚ましていなさい」に比べれば宗教色が薄められ、「スピリチュアリティ」に比べれば言葉の定義の曖昧さを回避でき、医療者にとって「非現実的」な語りを物語とすることで、それ自体は科学的アプローチが可能な「創造性」が、死にゆく患者に寄り添う医療者の態度として導かれる。ナラティブ・メディスンによって養われる創造性の豊かな医療者の態度は、患者が希望を見出すのを支えるだけでなく、エビデンスや客観性以外の多様な価値や意味も尊重し、チーム医療の基盤になることが期待される。
Key words
現代ホスピス、患者の全体性、スピリチュアリティ、ナラティブ・メディスン、創造性