米国Right to Try 法について:歴史・制度・課題

林令奈, 玉手慎太郎
Volume 1 Issue 2 Pages 1-8
First Published: March 29, 2019

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Abstract

終末期にある患者が未承認の治療薬を試験的に使用することを認める権利、「Right to Try」を認める法律が、米国において連邦法として成立した。この権利は一方で終末期患者の希望でありうるが、同時に健康被害の可能性からの懸念もある。この権利の是非に関しては、以下の点を見る必要がある。すなわち、(1) 第Ⅰ相試験終了段階という非常に検証度合いの低い薬の使用を認めるものであること。(2) 米国の薬物承認試験の歴史を見れば、食品医薬品局(FDA)による拡大アクセスプログラムという代替的な手段が存在すること。(3) これまでにすでにいくつかの倫理的課題が指摘されていること。日本における同様の法律の制定を検討する際には、単なる米国の後追いではなく、以上のような経緯と内実を慎重に吟味する必要があるだろう。