認知的完結欲求の観点から見たコロナワクチン関連の陰謀論の分析
池田亘孝
Volume 6 Issue 1 Pages 45-62
First Published: June 17, 2023
Abstract
陰謀論は現在でも多くの人に信じられており、人々の行動に影響を与える陰ものも存在する。個人が陰謀論に陥るメカニズムとしては自然選択・感情コントロールの喪失・認知的負荷などが知られているが、「より明確な説明により曖昧さを排除したい」という認知的完結欲求は個人内で陰謀論が形成される過程を知るのにより適切なメカニズムであると考えられる。本稿では認知的完結欲求を元に、ポパーの反証主義を満たす形で定義された陰謀論の形成過程を分析し、その分析から導きだれる陰謀論の解決手段を提示した。陰謀論の元となる信念は個人の不安や不信感を説明するように形成され、反駁の機能を持つ検証例が反駁の形式のみを有する検証例へと変質することにより反証可能性を失っていき安定化する。安定化した信念の元で、反駁の形式を持つ検証例が多数現れることは反駁を主張する主体と目的の存在により明確に説明される。このような陰謀論的思考が、集団内で共有され広まっていくことにより陰謀論者が増加すると考えられる。対策として、リラクゼーションや安心できるコミュニケーションの確立により不安や不信感を取り除くこと、幼少期に適切な権威主義を導入し段々と反証主義や完全性の否定といった権威主義を取り入れるような環境や教育を整備すること、早めの情報共有や妥当な説明の提示を行うことなどが挙げられる。
Key words
陰謀論、認知的完結欲求、反証主義、コロナワクチン