臨床における不確実性の生起
牛澤洋人
Volume 6 Issue 2 Pages 1-18
First Published: December 25, 2023
Abstract
科学としての医学がつねに未完成である以上、臨床現場にはつねに不確実性が存在し患者や臨床医を惑わせる。臨床における不確実性には(1)認識的不確実性、(2)相反的不確実性、(3)個別的不確実性、(4)精神的不確実性、(5)価値にもとづく不確実性、の5類型がある。こうした不確実性への対応の方法には「臨床推論」「共有意思決定」「不確実性への耐性」がある。臨床推論は病態生理や臨床疫学を生かしたプロセスであり不確実性を確実性へと導く。共有意思決定と不確実性への耐性は対話を生かしたそれであり不確実性を受容する。現在、不確実性の概念は臨床で十分に認識されていないものの、医学教育カリキュラムに取り込まれるようになり、プライマリ・ケア連合学会で教育講演やワークショップが開催された。また厚生労働省は、医療に不確実性が不可避であるにもかかわらず国民が医療の公共性を望む現状を指摘している。本論文は、臨床現場で不確実性がどのように生起するかを記述し、臨床における不確実性の認識と対応の重要性について問題提起している。
Key words
不確実性、臨床推論、コミュニケーション、共有意思決定、不確実性への耐性