医療実践における実在論からみた診断のあり方 ― 複数の実在の取りまとめと患者・医師の対話の促進 ―

田淵綾
Volume 6 Issue 1 Pages 17-28
First Published: October 06, 2023

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Abstract

診断は医療実践において重要であるが、高齢者の終末期医療や救命医療等の分野で医師から終末期の診断を下すのが難しいという声が上がっている。本論文は、現代日本の医療において診断の主流である根拠に基づく医療(EBM)とその批判からうまれた物語に基づく医療(NBM)を検討し、共に主観/客観という二元的な認識区分を前提にしていることが、客観的エビデンスに優位性を与え、診断の難しさを生み出していると述べる。そこで、二元的な認識区分を克服したアネマリー・モルの議論から、医療実践における実在について検討し、診断を複数の実行される実在が重なり合ったものの表象の一つと捉える。ここでは、診断はEBMの時のように客観的なものとは考えられないため、診断を下す医師は患者よりも優位性を持たず、患者と医師の関係はより対等なものになる。さらに、実在に注目することは、患者と医師が相互の自己利益によって医療実践について話すのではないため、患者にとって最善の診断を導くための対話が形成されると期待される。

 

Key words

診断、医療実践における実在論、患者・医師の対話、根拠に基づく医療(EBM)、物語に基づく医療(NBM)