日本におけるIVF多胎妊娠の現状と今後行うべき方策について
西山佳織
Volume 7 Issue 1 Pages 35-46
First Published: October 21, 2024
Abstract
生殖補助医療が急速に普及する今、様々な倫理問題が発生している。本稿は、体外受精によって発生する多胎妊娠をテーマとしている。第1部では、複数胚を母体に戻すDETが妊娠率の向上に寄与する一方で、多胎妊娠率の上昇により母体や胎児のリスクが増大する点を議論し、特に児の負うリスクが親の希望によって軽視されがちである点を指摘した。また、体外受精による多胎妊娠率を減少させる際の目標値を、自然発生率に設定した。第2部では、その目標を達成するための具体的なアプローチについて、ベルギー、スウェーデン、イタリア、オーストラリアなどの諸外国の事例を参考に考察した。日本においては、法制化によって移植胚数に厳しい制限を加えるよりも、日本国内のIVF実施施設の認定基準強化や、保険制度における移植胚数の明確化、過度な「自律尊重」の原則に対して施設が適切に拒否を示すことの妥当性をガイドラインで保証することなどの対策が優先されると考えられる。
Key words
生殖補助医療、体外受精、複数胚移植、単一胚移植、多胎妊娠