米Georgetown大学 Kennedy Institute of Ethics、Intensive Bioethics Course41参加報告/大関令奈

今回、2015年6月2日~5日に開催された米国ジョージタウン大学第41回Intensive Bioethics Courseに参加してきました。

このコースは1974年から開催されている、米国でも歴史ある倫理セミナーです。Kennedy Institute of Ethicsは1971年に設立され、以来「ヒトの生殖とBioethicsの研究のための」研究所として数々の業績を残している由緒ある研究所です。ジョージタウン大学はカトリック系の大学であり、倫理分野の考え方にも、ややカトリック的な考え方が流れているように感じました。

IMG_3629

IMG_3676

セミナーは、主に講義と多くのスモールグループディスカッションから構成されています。医療従事者に対する継続的倫理教育プログラムの単位認定コースでもあることから、半数近くが医療従事者の参加でした。ほかには弁護士、倫理学者や科学者などの参加もありました。講義の終わりにはたくさんの質問があり、非常に活発な意見交換が行われているのが印象的でした。海外からの参加者は少なく、私が交流した限りでは、カナダ、ノルウェー、オーストラリア、ブラジルからの参加者がおりました。日本からの参加者は私のみでした。

セミナー初日は、まさに「ジョージタウン・マントラ」ともいうべき「自律尊重」の講義からスタートしました。二日目までに医療倫理の4原則についての講義が行われましたが、いずれも、哲学的基盤から実際の医療にどのように応用しているか、実例を交えた講義でした。また、ビーチャムとチルドレスによる講義は、歴史を感じさせるものがありました。

IMG_3667

1時間半から2時間の講義に引き続き、それぞれ10名程度のグループに分かれ、スモールグループディスカッションを行います。私の属したグループは、前センター長のリロイ・ウォルターズ先生がファシリテーターとしてグループをまとめてくださり、議論がスムーズに進むよう気配りくださいました。のちのレセプションで、「彼のグループは毎回一番最後に終わるのよ」、とほかのファカルティから伺いましたが、確かに、非常に穏やかな先生で、議論を無理に止めることなく、自由闊達な意見交換をさせていただき、毎回ディスカッションの終了時間は、一番最後でした。

ディスカッションの時間は全日程中6回ありましたが、内容は一つ前に行われた講義についてのフリーディスカッションを行ったり、また実際に医療現場で働くグループ内の医師たちから、ケースを持ち寄り、全員で話し合うというものもありました。私のグループでは、心臓血管外科医と緩和ケア医がおり、二人から実際のケースが提案されて、議論されました。
心臓血管外科医からは、心肺停止時にはすべての処置をお願いしたいという事前指示書を持った、天涯孤独の認知症男性のケース、また緩和ケア医からは、根治ができない転移性癌患者さんが、自ら飲食を拒否して亡くなったというケースで、いずれも非常に難しい臨床倫理症例でした。
またメンバーの中に、難治性疾患の当事者の方がおり、実際に病院でなされたインフォームド・コンセントや、当事者としての貴重な意見を伺うことができました。参加者はある程度倫理的知識を持ったアメリカの専門職の方ばかりでしたので、私の英語力では、なかなか議論に積極的に参加することは難しかったのですが、話を聞いているだけで、アメリカで実際に起こっている現状を知ることができ、大変勉強になりました。

IMG_3681

三日目は選択講義がありましたが、医療倫理以外の興味深い講義(組織倫理や環境倫理など)が多く、選ぶのが大変でした。夕方からは、倫理についての映画をダイジェストで教えてくれる講義もあり、今後、倫理教育をどのように行っていくかについての示唆も得られました。

非常に濃密な四日間でしたが、ランチや休憩時間に他の参加者と意見交換をしたり、情報共有できたのは非常に貴重な体験でした。また希望者には、図書館におられる倫理の知識が豊富な司書の方と、研究などについてのアドバイスを受けることができます。私も自分の行っている研究について、お話する機会をいただき、非常に良い示唆をいただけました。

IMG_3700

セミナーが終わってからの時間は、ジョージタウンの古い街並みを見物しに行ったり、ワシントンDCの有名なリンカーンメモリアルやホワイトハウス、スミソニアン博物館群などを観光することができ、有意義な時間を過ごすことができました。

本セミナーでは、著名な先生方とお話するチャンスも多数あり、とても刺激的な時間でした。ファカルティはみなさん親切ですし、このような機会はめったにないと思いますので、ご興味のある方は、ぜひご参加をおすすめしたいとおもいます。

(医学博士課程4年 大関令奈)

*米Georgetown大学 Kennedy Institute of Ethics のウェブ・サイトはこちらです。

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.