生命倫理の現在と展望(2005年)/児玉聡

少し気が早いかもしれないが、今年起きた事件を振り返りながら、今後の生命倫理の展望を考えてみたい。

(1) 2月にはALS患者の母親が呼吸器を停止させ窒息死させた事件の判決が、また3月には、川崎協同病院「安楽死」事件の判決が出た。前者は患者の同意があったと して嘱託殺人罪が、後者は患者家族に十分な説明がなされず、また治療も十分でなかったなどの理由から殺人罪が適用された。終末期医療に伴う治療中止の問題は、行政では厚労省研究班が指針作りに向けて作業中の他、国会でも2月に超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」が発足し、法制化に向けて活動中である。医療現場での混乱を避けるためにも、何が許され、何が許されないのか、明確な基準作りが必要である。

(2) 国内36件目の脳死臓器移植が行われた3月には、一部の移植希望者が中国に渡航して「死刑囚ドナー」から移植を受けている可能性があるとして問題になった。5月には、脳死を一律に人の死とし、家族の同意があれば臓器提供できるという臓器移植法改正案が公表され、8月に衆院に法案が提出されたが、衆院解散により、審議されずに廃案となった。日本臓器移植ネットワークの試算では、この改正により臓器提供数が四倍に増えるとされる。倫理性の疑わしい海外渡航移植もやむなしという雰囲気を打破するためにも、早急の対応が望まれる。

(3) 8月、東京医大の特定機能病院の承認が取り消された。技術の未熟な外科医に執刀を続けさせたために、心臓手術で4人を相次いで死亡させた結果だった。これを一外科医、一病院の問題とせず、専門医認定制度の見直し、手術成績の公表、インフォームド・コンセントの徹底など、より安全・安心な医療体制の構築へと結びつけなければならない。

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.