人間のクローン胚からES細胞を取り出すことは許されるか?/長尾式子

 2004年2月12日の米科学誌サイエンス電子版において、韓国ソウル大学などの研究グループが世界で初めて人間のクローン胚を用いて胚性幹細胞(ES細胞)を作ることに成功したと発表されました。研究グループは女性16人から242個の卵子を採取し、その卵子から核を取り出したうえで、提供した女性の体細胞核を移植しました。このうち分割をはじめたのは30個。そのうち一つから、ES細胞を樹立することに成功したとのことです。

 今日、パーキンソン病の治療、臓器移植の代替など、ES細胞研究への期待は日々高まっています。こうした期待を背景に、わが国でも、2001年の「ヒト胚性幹細胞の樹立と使用に関する指針」*にもとづき、不妊治療の余剰胚を用いたES細胞の樹立と研究とが、「人の尊厳を侵すことのない」範囲で認められてきました。では、クローン胚からの樹立は?これが可能になれば、自分と同じ遺伝子をもつ臓器をつくることもできるかもしれません。しかし現在わが国では、そのまま母体に戻せばクローン個体が生まれうるといった理由から、クローン胚をつくること自体が認められてはいません。しかし昨年末に出された総合科学技術会議生命倫理調査委員会の報告書「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」**では、クローン胚からの樹立に関して賛否両論が併記されており、今後、再び議論が活発化する可能性があります。

*http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/hito_es.html

**http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/pubcom/chukan.pdf
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